スタプリ#1とプリアラ#2(宮元宏彰)

今日からスター☆トゥインクルプリキュアの放送が始まりました。

「恐怖は思考を停止する」と叫ぶ悪役に、ペンとノートをもって想像力で挑むプリキュア…これからがすごく楽しみ。

未見の方はこちらで⇒

スター☆トゥインクルプリキュア|民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」

 

そこで、シリーズディレクターかつ#1の演出である宮元宏彰に着目しながら#1を振り返ってみたいと思う。同じく宮元宏彰演出のプリアラ#2と合わせて特徴的なシーンを抜き出してみた。

(こういうブログは何もわかってないのにわかった風に書いてしまうから、あとで大変つらい思いをすることになるのですが、まぁとりあえずプリアラ#2は面白いし、とにかくスタプリが楽しみというのが伝わればと…)

 

 ・アバン

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最も印象的だったのがアバン、星奈ひかる(主人公)とフワ(妖精)が出会う一連のカット。天体望遠鏡で星をみていたところ、ノートに書いたオリジナルの星座が輝き、そこから妖精が出てくるシーン。

暗い部屋のなかに光源が現れ、何かが出てくる非現実的なわくわく感を、カメラの瞳への寄りで表現する。しかし次の瞬間、顔がぶつかると、目は(漫画的)くの字となり、カメラは引き、コミカルな痛みとともに現実へと引き戻される。溜めて抜ける、テンポの良さが心地いい。

 

①顔と目を使った誇張表現(顔がぶつかるときは目に寄る・目がくの字になる)

漫符による動きの強調(フワとぶつかる・おばけで飛び跳ね・床で痛がる)

③光と影を利用した時間表現(コントラストの強さ・星を見る夜という舞台の強調)

 

スタプリ#1の演出のエッセンスが詰め込まれているアバンだったと思う。

 

余談だが、顔同士をぶつけるファーストコンタクト、瞳への寄りというと、やはりプリアラ#2におけるいちかとひまりの出会いを想起する人も多いだろう。

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こちらは、さらに瞳に相手(いちか)の顔を映しこんでいるというのも面白い。

顔同士がぶつかるという、ゼロ距離での衝撃的な出会いは、目をそらすことのできない出会いともいえよう。プリアラでは、本来出会うはずのなかった真逆な性格の2人の運命的な出会いを演出していた。

スタプリでは、この出会い(ひかるとフワ)がどのような意味を持つのか楽しみだ。

 

・顔と目を使った誇張表現(補)

顔の近さと目でいえば、次のようなカットも印象的だった。

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スタプリ#1(左)、プリアラ#2(右)

ひかる(左)の場合は宇宙、ひまり(右)の場合はスイーツと、それぞれが好きなものについて語るとき、手前にキャラクターを置くことで顔の近さを演出し、語りの熱を際立たせる。

キャラなめで顔の近さを演出⇒一方的に迫るキャラをコミカルに描く

スタプリ(左)の場合は、手前で引いているキャラクター(プルンス)の輪郭が太いのも面白い。輪郭の誇張は、プリアラ#2では次のような使われ方もしていた。

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蛇足だが(漫符についてはこれから触れるのだが)、目を使った表現としては「しいたけ目」の例をいくつか挙げておく。

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スタプリ#1
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プリアラ#2

 

漫符による動きの強調

既に引用したgifなどからわかるように、改めて言及するまでもなく、スタプリ#1やプリアラ#2には多くの漫符(汗や勢いを示すしずくや、ガヤガヤを意味する四角形など)がある。ただし、漫符に限っていえば、この二作に限定されることでもないだろう*1

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スタプリ#1(左)の配色(黄・橙)はプリアラでも繰り返し用いられていた(右・他…)

 

そのなかでも、スタプリ#1で特に面白く感じたのは次のカットだった。

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慌てて出ていこうとするひかるを、おじいさんが引き留める。呼び止められたひかるは、一度止まった後、少し前のめりになってから体を立て直す。少しわかりにくいかもしれないが、ひかるが体を最も低くしたタイミングで周りに汗のような白丸が描画されているのが見える。カギとなるフレームに漫符を配置することで、動きに緩急をつけ、すこし滑稽で勢いのある動きを作っている。

このように動きの緩急に漫符を利用することで、逆に次のようなカットが映えていたようにも思う(顔もぶつかっている)。

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(ふってくるフワに対して)

ひかる「ったー!」

   「待って!」

   「うわぁ…」

 「ったー!」で反射的にのけぞったひかるは、その後「待って!」「うわぁ…」と間抜けな声を出す。ここの(とくに最後の「うわぁ…」での)間抜けさは、先のようなコミカルに緩急を与えた動きのなかに配置することで、より一層際立っていた(完ぺきな変身バンクのあとなのに、初めての変身に驚く1話主人公のおかしさといえばいいだろうか)。

こうしたお茶目な子供らしい一面が印象深かったからだろうか(あるいは声のせいだろうか)、星奈ひかるはここ数年のプリキュア主人公の中では(精神的に)幼いように感じた。もちろん、それゆえに#1のクライマックスでの彼女の無邪気な行動力の発露には驚かされたともいえよう。これから、どのように物語をリードしてくれるだろうか、期待したい。

最後に、プリアラからは次のカットを紹介しておきたい(これは単に好きなだけです)。

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・光と影を利用した時間表現

これは昨年のハグプリ#18でも言及されることが多かったようだが*2、宮元宏彰の演出の特徴として、時計や影があげられることが多い。たとえば、プリアラ#2では次のカットが典型的だ。

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昼の明るさから一転、夕方になる

すこし過剰な演出かもしれないが、上でみてきたようなコミカルな表現のなかに挿入されると、強い意味を持って視聴者に迫ってくる。これは、時間をわすれてスイーツについて語ってしまったひまりが、ずいぶん時間が経っていたことに気付かされる瞬間である。彼女たちが遊べる時間の終わり(6時のチャイム)が響くなか、ひまりは自分の行いを後悔する。宇宙をテーマ・舞台とするスタプリでは「夜」という時間が、ひとつの鍵となるのではないだろうか。冒頭で引用したアバンでは、夜の光というモチーフが強いコントラストによって強調されていた。これも、これからの展開に期待が膨らむところである。

また、スタプリ#1での時間経過表現としては、主人公の昼寝が面白かった。こちらも、影と光を使った時間経過の表現の例としてわかりやすい。すこし寄りはするものの、俯瞰で主人公を見下ろし、雲のコントラストが強い影と、キャラクターから弱く伸びる影で昼寝による時間経過がのんびり感じられる。

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めちゃめちゃ寝てる

昼寝はさておき、これによって悪役の登場シーンが夕方になり、影が映える時間帯となる。

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手を広げてひとりがひとりを守る構図は、プリアラ#2にもあるが、スタプリ#1では主人公サイドが影に入っているというのが面白い。ハグプリ#16(渡邊巧大コンテ・作監)では、ルールーに縞状の影が落ちていたのが記憶に新しいが、今回の影にも意味はあるのだろうか(画としてかっこいいので、意味がなくても驚かないが何かあってもおかしくない…くらいだろうか)

#1では、フワちゃんの力も借りて宇宙人の女の子と話ができるようになったひかる、これからプリキュアや悪役の面々とどのようなコミュニケーションを広げていくのか楽しみだ。

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・さいごに

プリアラ#2に衝撃を受けて、再びプリキュアを追いかけるようになったというのもあり、宮元宏彰がシリーズディレクターになると聞いてスタートゥインクルプリキュアには強い期待を抱いていた。結果としては、その期待以上に宮元宏彰を感じる1話だったのではないかと思っている。

この記事では、なんとなくプリアラ#2を懐かしみながら、今後のスタプリに思いをはせてみた。世界観にしろ、物語の進行にしろ、まだわからないことばかりなので何とも浮ついた記述ばかりになってしまったが、なにしろ楽しみにしているというのだけは間違いない。近いうちに、きちんとプリアラ#2以外も参照しながら、記事のアップデートを図っていきたい。

*1:昨年、佐藤順一小黒祐一郎トークショー(@新文芸坐×アニメスタイル セレクションvol.100)で漫符について言及し『きんぎょ注意報!』あたりから、佐藤順一をはじめとして、スタイリッシュな使い方がされるようになったとの話があった。最近ではハグプリ#4、軽快でスポーティーなバスケの芝居のなかに織り込まれる漫符が非常に好きだった。https://twitter.com/AshitanoGin/status/967697088128667650

*2:たしか、ブログで明確に記録してくださっている方がいたように思うのだけど、思い出せない…ツイッターでは次のような議論をよく見かけたように覚えている。https://twitter.com/Karasuda1984/status/1003107358019481600